表現の喜び  〜永野むつみさん講演会&ワークショップ〜

今日はずっと楽しみにしていた、劇団ひぽぽたあむの永野むつみさんの講演会とワークショップに参加してきました。7月に幼児さんが観る、子ども劇場の人形劇の事前交流会です。うちの子どもたちは中1・高1になるのでもちろん一緒に来るはずもなく、今日は単身参加しました。これまでに人形劇は数回観ていますが、講演会も聞いたことがありました。とってもよかったので、ぜひまた聞きたかったのです。

 

次男は赤ちゃんの時から子ども劇場に入っているので幼児作品は年間4本以上(小学生対象の作品を観せたりもしていたので)観ています。小学校低学年の時に、「幼児さんの作品でどれが一番よかったか」という話をした時に、私も次男も「はりねずみと雪の花」で同じでした。

劇団ひぽぽたあむ  

今日、講演を聞いてその理由がわかった気がしました。この作品は子どもだましではなく、本当に切なかった。人間(動物ですが)の本質が描かれているのです。それは、永野さんを貫く人間への洞察と、人間の弱さへの温かい眼差し、それでも頑張って生きていこうよというメッセージなんだなと思いました。

 

講演では現在の劇団立ち上げの前に永野さんが所属していた劇団のお話とともに、表参道のクレヨンハウスのお話がありました。まだ店舗が2階にあった頃、私は母にクレヨンハウスに連れて行ってもらいました。電車を乗り継ぎ、子どもを連れていたら片道2時間はかかったと思います。その日は母が絵本作家のかこさとしさんの講演会を聞きに行きたくて私は託児室だったのですが、その託児室もまた楽しかったのです。文化って素敵だな、本物って素敵だなと感じた原点で、はっきりと覚えています。

短大はクレヨンハウスの近くにありました。昼休みや放課後に絵本を見に行ったり、ランチを食べに行ったり、休日にも絵本作家さんの講演会によく行きました。五味太郎さんやくどうなおこさんなどたくさんの方のお話を聞くことができました。

そんなことを思い出しながら、子どもたちが小さかった時のこともたくさん思い出されました。そして、自分も子どもたちも本当に未熟で、でも子ども劇場の中でたくさん声をかけてもらって親子ともに育ててもらったのだという感謝の気持ちでいっぱいになりました。失敗して、チャレンジして、少しずつ成長していく親子へのあたたかいまなざし。こんなに効率化された現代の中で、時間もかかるし、手間もかかる子ども劇場。その活動を信頼してくださっていることが本当に嬉しかったです。最後に、「子どもが思春期になって、ああよかったと思うに違いない」とお話されていましたが、まさに長く関わっていてよかったなと思っています。学校を超えたつながりが子どもにとってとても大切だと思うし、親以外の大人とのつながりもまた、思春期の子どもに必要だと思うからです。

 

現代の子どもたちには時間がない、それはよく言われることだけど、ただ遊ぶ時間がない、ということではないというのがわかりました。大人が、子ども自身が問題を解決するまで待てない。気持ちを熟成させる時間が与えられていないのです。昔はトラブルがあって、「ごめんね言ってもいいかな」と思えるまでに、行動に移すまでに数日あった。でも今は「ごめんねしなさい!!(とりあえず!!!、ここはなんとか!!!)」と、大人が子どもの解決すべき課題に介入しているのだということがお話の中でよくわかりました。ごめんねと言わなくたっていい。自分が本当にそう思えるまでは。

子どもたちが通っていた森の幼稚園には、自然と、時間がありました。竹馬や逆上がりができるようになりたくて何日も練習し、年長全員ができるとお赤飯でお祝いをしてくれました。身体と、「やってみよう」という心の熟成を待つ環境がありました。送迎やお弁当は大変だったけれど、幼児期に豊かな子どもの時間を保障してあげられて本当によかった!

 

今日は、自分の小学生時代、短大時代、子どもたちの幼児期、と、たくさんの時間を思い出すことができました。自分には文化や芸術・自然に触れてきた子ども時代があるということ、自分の子どもたちにもできる限り自然に触れる幼児期を過ごさせてあげられたこと、失敗して、挑戦して、親子ともにたくさんの人に関わって育ててもらったこと。思春期で子どもとの関わりが難しくなってきた今、子育てうまくできなかったと落ち込むこともありますが、だめだっていいじゃない、またチャレンジすればいいじゃない、という深い愛情を受け取ることができた2時間でした。

 

そして、午後のワークショップ。これがまた、自分の目指す方向性を照らしてくれるものでした。

一応、年間100コマ以上の授業計画の目途はついている今。世界のおもちゃ、手作りおもちゃ、子どもの成長とおもちゃ、乳児保育、造形表現、が今年の保育専門学校での担当科目。やることはだいたい決まったけれど、保育士を目指す学生たちに、何を最も伝えたいか、そのためにはどのような方法がいいかを考えているところでした。私は保育を学ぶ前に芸術学科で油絵を描いたり彫刻をしたりしていました。子育てと芸術は共通してるな、と思うから、ミーナも、「ハートと、アートで、楽しく子育て」がキャッチコピーです。

 

「環境を整えて、表現の喜びを見出すサポートをする」。これが、私の今年やることなのではないかと思いました。こんな材料があるよ、こんな道具があるよ、時間もあるよ、仲間がいるよ、さあみんなで楽しもう!って感じで。これは、ただじゅんさんのおもちゃインストラクター養成講座で感じた表現の楽しさに近いです。表現することをお仕事にされている方は、皆さんそれぞれに表現の喜びを具体的に伝えてくださいます。保育士も表現の喜びを知り、子どもたちとその楽しさを共有しなければ。というわけで、午後は作品作りに没頭しつつ、どこか仕事モードでもありました。

 

今日のワークショップは、はじめに永野さんが楽しそ~うに「こんなのもいいよね!」「こんなのも素敵ね!」と、ちょっと作って見せたらすぐ制作タイム。ずらりと並ぶ色とりどりの材料と魅力的な道具に目移りするくらいでした。

小さな子どもたちもハサミを使って、けっこう大丈夫なことにびっくり。ここはもう「何かあってはいけない」という保育士的ブレーキがかかってしまうところだけど、子どもは意外としっかりできるのですね。

広い会場で、たくさんの大人と子どもがあっちに行ったりこっちに行ったりして、夢中になって作っていきます。はじめて会った大人にも「見て見て~」と、見せてくれます。もはや巨大な仲間空間です。

私が作りかけの作品は、すぐに小さい子の手の中に。

作業が中断してしまうのだけど、けっこうはっきり交渉してくるのです。

「ねー、いーい?」

「ねー、かしてー」。

あまりにはっきりちゃんと言うので、貸してあげては、

「ねー、いーい?」

と聞いて返してもらい、また

「ねー、かしてー」

と小さな手の中に入り、と繰り返し。

こんなに可愛い目に見つめられたら作業が中断しても差し出してしまいます!!

最後は永野さんと一緒に写真を撮ってもらいました。素敵な方でした!

帰り道、なんだか絵を描きたくなりました。人の感性を呼び覚ます、魅力的なお力があるのでしょう。

さて、7月の人形劇は幼児対象のため、私は観ることができません。7月までに近隣の幼児さんの親子をお誘いして一緒に観る、という作戦を思いつきました。

小さなお子さんをお持ちの方、私と一緒に子ども劇場で質の高い人形劇を観てみませんか?ブログを読んでくださって入会された方たくさんいます。本物の芸術は素晴らしいです。子どもと一緒に感動し、仲間と共有しませんか?興味ある方はぜひ声をかけてください。市内各地(というか全国)にあります。

年間4回年齢に合った舞台を観ることと、地域に根差した子育て仲間を作ることを大事にしています。つい先日はみんなでパフェパーティーをしたばかりです。「こんなことやりたい」をみんなで実現する会員制の団体です。

今日は、素敵な永野さんのクリエイティブなパッションに触れて、心満たされる1日でした。そして、新しい仲間が増えたこともとっても嬉しいことでした。

文化がどう子どもたちの成長に影響するかは、習い事のようにすぐには目に見えません。でも、だからこそ子どもが成長した時にこの関係性と子どもたちの感性がかけがえのないものになります。ぜひ、お子さんが小さなうちに子ども劇場に出会ってほしいです。ひとりでも仲間が増えたらいいなと思っています。

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